2014年度長期派遣奨学生〜吉野もも

研究タイトル:
「ロイヤルアカデミースクールへの交換留学と、ヨーロッパ自主研修」

氏名:吉野もも
奨学年度:2014年度奨学生
奨学区分:長期派遣枠
滞在期間:2014.4.1 – 9.18
滞在先:イギリス、スペイン、ドイツ、イタリア、フランス、スイス

ロイヤル・アカデミー・スクールズ付近にて

活動内容:

イギリス、ロンドンのロイヤルアカデミースクールへ4ヶ月交換留学したのち、1ヶ月半ほどヨーロッパ(スペイン、フランス、スイス、イタリア、ドイツ)を旅行し美術や歴史について調査しました。
ロイヤルアカデミースクールでは講義を受講したり批評会に参加し、アーティストの話を聞いたり、学生がどのような作品をつくっているのかを対話しました。
私は学内に壁画を制作し、場の空間を変容させる作品を実践しました。ロンドンではギャラリーや美術館に通い、過去の傑作から現在のアートシーンまでを巡りました。
ヨーロッパ旅行では、歴史的建築や現代建築、古代の美術、街並みなどを見て回り、人々の空間に対する認識の調査と、歴史、文化面において日本とどのように違うのかを考察しました。

気付いたこと、見つかった課題:

イギリスには煉瓦の建物がひしめいていますが、1666 年のロンドン大火でほとんどの木造家屋が焼失してしまったために、都市計画によって家屋は石造か煉瓦とされたそうです。
対して日本は木造建築の歴史で、あえて揺らして地震に耐える構造や、様々な用途に変容させる和室など、”動く”つくりが特徴になっています。
しっかりした土台のうえに豪勢に装飾的に作り上げる西洋と、流動的で侘び寂びを大事にするシンプルな日本の文化には大きな根本的な違いがあると感じました。
学生は皆、様々なメディアを使って制作していて、私に対しても「立体は、版画はつくらないのか」と言いました。学校にいるうちに技法をたくさん学んで、後で選択するという印象でした。技法を身につけていると、例えば版画のワークショップができたり、お金につなげることもできると言っていて納得しました。今後の課題として、もう少し違うメディアにも挑戦しようと思います。

渡航を経ての今後の制作活動:

正直、留学を通して何かが劇的に変わるという安易な期待をしていたところがあったのですが、急に何かが変わることはあり得ないと気付かされました。様々な国籍の人がいて当たり前の状況で、 皆が皆、自分の国や地域を意識しているように感じられました。視野が広がった、物事を俯瞰して見れたことは大きな収穫だと思います。
RAの卒業制作展で卒業制作が売れていくことや、国際展の規模の大きさに驚きました。世界でアートをやるということ、日本人の作家であることを意識し、今後は積極的に活動を海外に広げていきたいです。
また主要都市では連日、批評家や作家などによる講演プログラムがあり、美大の学生は競ってそれに参加していました。そして皆で一緒に話したときなどには、自身が最近どれだけ講演に参加したか、といった話題で競い合いが起きるようなこともしばしばあったように思います。勿論、彼らは数にのみ執着しているわけではなく、その数で競い合うほどの新しい知識に対する貪欲な姿勢には驚かされ、自身もそのようにあるべきなのだと強く感じさせられました。

本奨学プログラムを利用してみて:

非常に満足です。私は留学メインで利用させて頂いたが、研究旅行という目的で利用できるという点が素晴らしいと思います。様々ある奨学金は留学に対するものであることが多いし、留学は学校の承諾が必要なのでハードルが高く、学生は皆 海外に行きたいけれどもお金が、という人がほとんどだと思います。留学以外でも研究目的さえあれば自由に利用できる奨学金は本当にありがたいです。

 

渡航スケジュール:
・4/1 羽田空港より渡航。ヒースロー空港(イギリス)着。ロンドンロイヤルアカデミースクールの日本人チューターの方が空港まで迎えにきてくださる。
・〜4/12 ロンドン在住の日本人アーティストのご家族のお宅にお世話になる。
・4/3 ロイヤルアカデミースクール(以後RAと表記)に初来校。学校のアトリエが割り振られる。 ・語学学校を見学。体験入学。
・4/12 シェアハウスへ引越。留学終了まで住む。
・4/23 RA授業開始。
・4/25 RAアーティストトークの講義。以後、週に1度受講。 ・大英博物館、ナショナルギャラリー等の美術館訪問。 ・アトリエで制作。 ・街に出てカードを貼っていく作品を実施。
・5/6 CRITS(批評会)第1回目。以後月に2回ほど実施。1人ずつ学生がいま制作しているものを見せ、チューターとゲストと学生達でディスカッション。
・5/13 RA関係のイベント“Art After Death”に出向く。ロンドンからすこし郊外の墓地で映像上映、トーク、パフォーマンスなど。
・5/19 日本人アーティストが運営しているプロジェクト“Art Action UK”のオープニング。スタッフとしてお手伝いする。
・5/20 CRITS 自分の発表の番。色んな意見、質問をもらった。
・5/23 RA内にて、1年生のオープンスタジオ。
・5/24 RAの友人に案内してもらいギャラリーめぐり。ロンドンの主要なギャラリーを7カ所ほどまわる。 ・5/29 Sarah Jonesさんとチュートリアル(先生に個別に作品を見てもらう)。卒制展のため、アトリエ掃除。
・5/30 “Art Action UK” Deptfordでの展示イベントをお手伝い。
・6/1~ RAカフェスペースにて壁画制作。
・6/9-6/12 芸大の友人がロンドンに遊びにくる。RA案内、市内観光、ギャラリーめぐり。
・6/13-6/23 RA 卒業制作展。
・6/17 RA卒業式に参加
・6/27 RAカフェスペース壁画完成パーティを実施。日本料理でおもてなし。RAの学生、先生方、現地の日本人アーティスト、訪英中のギャラリストの方が来てくださった。
・6/28 RAの友人が企画したイベントを見る。パフォーマンス、サウンドアートなど。
・7/1-7/6 ウェールズを旅行
・7/15-7/19 パリへ旅行。ルーブル美術館、ポンピドゥセンター、ヴィルヴィオラなどの展示を見る。
・7/19 パリからロンドンへ戻る。 ・RAのアトリエにて制作。 ・シェアハウスを引き払う
・8/6 ヨーロッパ旅行に出発。スペイン、バルセロナへ。
・8/6-8/9 バルセロナ。サクラダファミリア、グエル公園、Sant Pau Art Nouveau Site、ダリ美術館、カテドラル、ピカソ美術館、Monjuic城。
・8/9 ビルバオで途中下車。グッゲンハイム美術館。オノヨーコ展とリチャードセラの常設作品が素晴らしい。現代建築をみてまわる。
・8/9 ビルバオからトレラベガへ。電車とバス。到着時、夜10時くらいだったが町のお祭りの日で、深夜までにぎわう。出店のカラーが日本とまるで違うことに衝撃を受ける。
・8/10 アルタミラ洞窟壁画美術館。およそ1万5千年前に描かれたアルタミラ洞窟壁画(レプリカ)を見る。ふもとの古風なSantilanaという町も見学。
・8/11 飛行機でイタリア、ローマへ。
・8/11-14 ローマ。バチカン美術館、トレビの泉、St.Pietro大聖堂、宝物館、コロッセオ、フォロロマーノ、パンテオン。
・8/15 電車でナポリへ。
・8/15-18 ナポリ。ポンペイ遺跡、ソレント(ビーチ)、カプリ島
・8/19 電車でパドヴァへ、一泊。観光地ではない普通の街を見てみたかったため。展望台など、散歩。
・8/20 電車でヴェネチアへ。
・8/20-22 ヴェネチアビエンナーレ建築展、リド島、杉本博司展へ。
・8/22 Vicenzaという町で一泊。散歩。
・8/23 電車でスイスへ。
・8/23-27 スイス、インターラーケン。Thun湖、城、firstハイキング、Luzern。
・8/28-8/30 ベルン。木造橋、パウルクレーセンター、ベルン歴史博物館。
・8/30 電車でドイツへ。
・8/30-9/4 ミュンヘン。クンストアカデミー(美大)見学、ピナコテーク、ミヒャエルエンデ ミュージアム、ダッハウ強制収容所、レジデンツ(ギャラリー)。
・9/5-9/7 デュッセルドルフ。アカデミー(美大)見学、K20、K21(美術館)、ギャラリー。
・9/8-9/12 ベルリン。ベルリンの壁、Treptower Park(旧ソヴィエト戦争記念公園)、旧ナチス軍用空港、ユダヤ博物館、ギャラリーめぐり。
・9/12 飛行機でロンドンへ。サージョンソンギャラリー、裁判所 見学。 ・9/18 飛行機でロンドンから東京へ帰国。
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