2017年度長期派遣奨学生〜新井 麻弓

研究タイトル: 「〝失われたもの〞を求めて 『個人史と地球史』」

新井 麻弓
奨学年度:2017年度奨学生
奨学区分:長期派遣枠
滞在期間:2017.3.29 – 8.2
滞在先:アメリカ合衆国

活動内容:

4ヶ月の米国におけるホームムービーの調査および、アマチュアフィルムやホームムービーに関するシンポジウムに参加し、フィルムアーキビスト、歴史家、映画研究者、フィルムメーカーとの交流。1920年代頃からアメリカを中心に広まったホームムービーの調査を通して、集団の中の当事者の視点で撮影されたドキュメンタリーの手法や思考法の原点を探る。
Library of Congress 内に帰属するMoving Image Research Center(ワシントンD.C.)を拠点に、アメリカ内外で主に20年代から50年代にかけて様々な人々によって撮影されたホームムービーを多く含むJ. Fred MacDonaldコレクションを主軸にリサーチに着手。
また、実験映像及びホームムービーの双方の繋がりを持つコレクションを保持するHarvard Film Archiveや、ホームムービーを地域の歴史的資料としてコレクションするNortheast Historic Filmなども巡り、ホームムービーを多角的に検証する。

気付いたこと、見つかった課題:

1920から50年代、ホームムービー撮影とは、35mm、16mm、9.5mmあるいは8mmフィルム用のカメラ、フィルム本体の購入、その現像代、また人によっては知人のカメラマンに頼むための撮影代を要し、必然的に限られた国に住む、限られた人間たちだけができる特権的な趣味でした。
彼らは彼らの身の回りを写し、旅先で見つけた自分たちの世界とはかけ離れた風景や人々を写し続けてきました。多くのフィルムは、主に息子の可愛い笑顔や妻の美しいドレス姿を写しているものの、フレームの端に意図せず映る世界の輪郭から帝国主義や植民地主義、あるいは資本主義の構造を直接的に感じさせられました。
一方、アメリカの初代婦人参政権運動家のホームムービーからは、ホームムービーの持つ〈声なき声〉を拾い伝える力も強く実感しました。

渡航を経ての今後の制作活動:

私は、国内外各地に一定期間滞在し、あるいは長期に渡って定期的に同じ土地を訪ね、その地域の歴史や社会システムの現状を調査し、その土地に住む人々と対話を重ねながら、作品を制作しています。それらの制作の過程において、土地の人々の参加や介入を重要視しており、必然的にその記録もまた大切にしてきました。
今回の滞在調査を通して、撮影する側・される側の力関係について、改めて強く考えさせられました。特に、多くの時間を割いて鑑賞した戦前・戦後直後に撮影されたホームムービーは、ドキュメンタリーの原点を超えて、現代の世界全体の社会システムの根源を見ているように感じました。
ここで得た実感は、〈私〉という存在の立ち位置、ドキュメンタリーの持つ陰陽双方の力を強く意識させ、今後の制作に大きく寄与すると考えています。

本奨学プログラムを利用してみて:

今回石橋財団奨学生に選定、援助いただきまして、以前より願っていたこのホームムービーリサーチを実行することができ、大変感謝しております。
特にこのプログラムは、留学など大学等の機関に帰属といった制約がないため、自身で研究に必要だと感じた旅を自由に組み立てたり、その場で見つけたことに対して臨機応変に対応・実行できたりするので、私の計画には非常に心強かったです。
自分で全て組み立てることは、確かに単純作業ではなく、時間もかかりますが、その分計画完了時の達成感は今後また国内外でフィールドワークをしていく際の大きな自信に繋がると感じました。有難うございました。

 

渡航スケジュール:
3月29日 成田空港より渡航。ダレス国際空港(ワシントンD.C.※以下、DC)着。
3月29日-4月1日 DC及びアレクサンドリアを巡って、街の様子を知る。
4月2日 アメリカ議会図書館(DC)内Moving Image Research Centerにてフィルムライブラリアンとのミーティング後、リサーチを開始。
4月10日〜23日 ニューヨーク(以下、NYC)へバスで移動・滞在
4月11日〜4月14日 アマチュアフィルムやホームムービーに関するシンポジウムOrphan11に参加( Museum of the Moving Image (NYC)にて)。アメリカ国内外の多くのフィルムアーキビストやフィルム研究者やフィルムメーカー、フィルムコレクターに出会う。
4月18日〜21日 ボストンへバスで移動・滞在。ハーバード大学フィルムアーカイブセンターにてフィルムアーキビストのサポートのもと、Anne Charlotte Robertsonコレクション及びGeorge Kucharコレクションの鑑賞とリサーチ。
4月24日~ DCに戻り、議会図書館にてリサーチを再開。
5月6日 RichmondへCenter for Home Movie(ホームムービーに関する地域上映会等を世界規模でオーガナイズしている機関)の創設者にアポをとり会い行き、インタビューを行う。
5月7日~ DCに戻り、議会図書館にてリサーチを再開。
6月4日~8日 スミソニアン・国立文化人類学アーカイヴの持つフィルムコレクションを調査
6月20日~7月2日 LAへ飛行機で移動・滞在。Japanese American National Museum(日系アメリカ人のホームムービーを多く保管)、UCLAフィルムアーカイブなどを中心にホームムービーのリサーチ。
7月2日 DCへ飛行機で戻り、再び議会図書館にてリサーチを続行する。
7月9日~22日 メイン州BucksportにあるNortheast Historic Filmへ飛行機で移動、滞在、リサーチを行う。
7月19日〜21日 Northeast Historic Filmにて行われる毎年夏に開かれているシンポジウムSummer Film Symposiaシンポジウム参加。今年のテーマは、The Political / The Personal The Global and Local Function of Regional Media。
8月2日 帰国
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