2018年度短期派遣奨学生〜佐藤 はなえ

研究タイトル:
「現代タトゥーと現代アートの調査」

氏名:佐藤 はなえ
奨学年度:2018年度奨学生
奨学区分:短期派遣枠
滞在期間:2019.2.4 – 8.4
滞在先:イタリア、スイス

活動内容:

この報告書を書いている今もまだ帰国しておらず、滞在5ヵ月目(石橋財団奨学金受給は2ヵ月)になるのですが、感想や今後の課題は多すぎてちょっと400字でまとめるのは難しいです。
タトゥーとアートは深く関係し合っているのですが、ここでの活動報告はそれらを分けて書こうと思います。まず渡航の1番の目的は“現代のタトゥー”を知ることでした。タトゥーは世界中で古くから用いられている伝統芸術の一つです。日本国内でも古い歴史がありますが、ここ数十年は日本国内でタトゥーに対して良いイメージがありません。困難も多岐にわたります。まず日本はタトゥーに関する法律や資格がありません。そしてタトゥースタジオも保健所を通して営業しているわけではないので、衛生面など様々な問題を抱えています。つまりタトゥーアーティストが仕事をすることが合法ではない現状があります。日本国内はタトゥーの道具の入手が困難で、情報もとても遅れています。タトゥーの博覧会に行くとJAPANESEという和彫りのジャンルが高い人気を誇るのに対し、その彫り師の多くは日本人ではありません。そしてJAPANESE以外のスタイルを専門とする日本人彫師が少ないです。このように現在日本国内ではタトゥーをすることがとても困難なのです。
世界の現代タトゥーはここ30年で機械が発達し、合法化され環境も整えられていき、大きく市場が変わりました。
私がイタリアを選んだ理由はタトゥーの大きな市場であるとともに法律面もヨーロッパ1厳しい国だからです。
私はイタリアのタトゥースタジオで働きながら、様々な彫り師にスタジオ内外で会って話を聞いたり、彫り師やお客さん、地域住民にアンケートをとって意識調査をしたり、とにかくタトゥーのここ30年の歴史と技術を吸収して帰ることに努めています。また動画も制作中で「HANAE TATTOO」というユーチューブチャンネルでタトゥーについて日本語で発信する予定です。イタリアには世界的に活躍する彫り師が数多くおり、私は彼らから学んだタトゥーから、日本のタトゥー業界をより良いものにするヒントを得ています。

次にイタリアのアートについてです。世界遺産第一位のイタリアなので街のあらゆるところに芸術品があります。油画専攻の私はイタリアのどこに行っても勉強になります。ミラノにいた時は空いた時間にギャラリーの手伝いをしたり、現地のアーティストやコレクターと交流したり、展示の計画をプレゼンしていました。フオリサローネもあったので旬な美術作品を多く見ることもできました。今はファーノでの初個展「SONNAMBULO」を開催していたり、ベネチアビエンナーレとローマのアーティストインレジデンスも訪問する予定があります。

気付いたこと、見つかった課題:

まず私は学部3年間で10ヵ国くらい旅しました。どの国も刺激的で多くの発見がありましたが、どれも長くて一か月程度の滞在だったので、今回のイタリア長期滞在は初めての経験です。イタリアは今回が二度目で、一度目は二年前のベニスビエンナーレのためにベニスとミラノとローマのみ訪れ、二週間ほど滞在しました。
正直に言ってしまうと数日の観光客として訪れた時と長期滞在した時とではまるで違う国のように感じられます。これは日本でも同じことが言えるかもしれません。長期間日本に住んでいた私と、日本に観光客として訪れた友達とでは全く感想が異なります。対外的にPRしている文化のみならず、国の制度や国民の性質、掘れば掘るほど情報が出てきて面白いので長期滞在はお勧めです。
私はこれまでの海外渡航経験を通して感じていることが三つあります。一つ目、縁や出会いを大事にすることと、二つ目、自分の直感を信じること。今まで危険な目(震災や人災)にあって急遽帰国したこともありました。地球も人も流動的なものなので、何かあった時に対処できる冷静な判断力と知識は必要です。幸い今回のイタリアでは危険な目にもあわず、出会い運に恵まれ充実した日々を送っています。そして三つ目、現地人と交流すること。私はどこにいっても現地人といるようにしますが、今回も必要以上に日本人とは交流しないようにしました。決して悪いことではないのですが、よくあるのです、日本人同士で集まるコミュニティが。その国のことはその国の人間がよく知っているので現地人と繋がっていった方が得られる情報が多いです。伊語ゼロで来伊した私でもどうにかやっていけているので、語学能力の心配をせずに突っ込んだ方が勉強になります。
最後に長期滞在のメリット二つとデメリット二つについてです。メリット一つ目は長く滞在すると季節を体感できることです。イタリアは日本のように縦長の半島で地域によって風土や言語が大きく異なりますが話が長くなるのでここらへんで。私はイタリアで夏と春(梅雨)と冬を体感し、内陸と港町に住みました。季節、つまりその国の風土というものは、文化芸術は必ず関係しているので様々なことに気が付くきっかけとなりました。
メリット二つ目は近隣諸国に行けることです。例えばヨーロッパだとパスポートの提示なしで行き来できる国も数多くあります。日本からだと交通費が高いため、長期滞在のチャンスにまとめて数か国行くのはお得です。
デメリット一つ目は滞在方法です。外国人であれば滞在するのに理由と手続きが必要です。イタリアは色々制度が面倒です、国によって制度は異なるので海外移住を視野に入れている人は綿密な下調べが必要です。
デメリット二つ目は家族の存在です。イタリアは恋人がイタリア人で来伊する外国人もたくさん会いましたが、もし家族が日本のような距離が遠い国にいた場合、時差もありますしコミュニケーションが大変です。私は今後も海外で仕事したいと考えているので日本の家庭とどうバランスをとるかが今後の課題です。

渡航を経ての今後の制作活動:

よく質問でタトゥーとアートどっちやりたいの?と聞かれますがどっちも真剣にやりたいです。今年はタトゥーをメインに活動します。タトゥーに関してやるべきことは主に三つです。
①タトゥー環境がより良いものになるよう既存でないアプローチをしていくこと。②自分の技術を高めること。③日本の彫り師に失敗されてしまったタトゥーのリメイクをしてタトゥーへのマイナスイメージを可能な限り拭うこと。
直近二年間の確定予定としては、帰国後三カ月はビザの都合上イタリアにはすぐ戻れないので、ミラノで出会った静岡在住の日本人彫り師のもとで勉強しながら、日本のタトゥーが良い環境良い技術になるように展示活動や聞き取り調査などを行う予定です。そして冬に一旦イタリアに戻る予定です。今年度は休学させていただいておりますが、来年度からは学部四年生になるため日本にいなくてはいけません。来年度ミラノで展示の予定もあるのですが、資金次第です。

 

渡航スケジュール:
(※登場人物の名前はほぼタトゥーアーティストです。)
2/4 成田空港(東京)→モスクワ乗り換え→マルペンサ空港(ミラノ)
2/5 タトゥースタジオOINK FARM(ミラノ、KojiとRoberta)で働き始める
(と同時に語学学校も通う、ミラノのギャラリーや美術館もまわる)
2/8–10 ミラノタトゥーコンベンション手伝い
2/20 部屋の霊が気になったので2度除霊してもらったが祓えなかったので、引っ越しを考えるようになる
3/3 ミラノ市内で引っ越し
3/5 Marco Wallaceのスタジオ訪問
4/11– フオリサローネ、ミラノデザインウィークなので街中の展示を見てまわる
4/16 疲れたので市内の温泉に行く
4/17 OINK FARM(ミラノ)スタジオクローズパーティー(職場を突然失い、しばらく自宅学習の日々が続く)
4/18 Amanda Toyのスタジオ訪問
4/19 コネリアーノに行く、コネリアーノ城に行く、La Malafedeのスタジオ訪問
4/20 ロビーゴに行く
4/21 パスクワのパーティーに参加する
4/27 ナポリに行く、COMICONのタトゥーブースの手伝いをしながらイタリアのオタクと交流、冊子を満喫する
4/28 Fabio Gargiuloのスタジオ訪問
4/29 ナポリを案内してもらう、展示やカタコンベ見たり、Mr.Pencilのスタジオ訪問
5/9 Rudy Amicisのスタジオ訪問
5/11 ~時間に余裕ができたのでギャラリーや美術館を再度まわり始める。ひょんなことからギャラリーの搬入を手伝ったりすることになる。
5/19 ミラノタトゥーコンベンション、今度は客として視察
5/21 プロパガンダタトゥーテンプル訪問、手伝い
5/23 ブレシャに行く。
5/25–27 モンテカティー二テルメに行く、Luca Nataliniのスタジオ訪問、温泉に行く
5/29 Alchemink、Leonのスタジオ訪問
6/3 スイスChiassoに絵の打ち合わせに行く、あとギャラリーに行く
6/4 ファーノに引っ越す、さらばミラノ
6/5 Matteo Cascettiに招待され、sleepwalkerスタジオでタトゥーの勉強(仕事)兼絵の制作を再開する
6/24 この活動報告書を書いている
6/27–7/11 「s.onnambulo」ギャラリーにて初個展を開催
7月 ボローニャとリミニとタトゥー博物館とベニスビエンナーレに行く予定がある
8/4 帰国
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