研究タイトル:
「「パラレルな最果ての地」生物相と人類史の追想」
活動内容:
インドネシアスラウェシ島にて、昆虫相の調査を行った。ウォレス線とウェーバー線のちょうど間にあり生物地理としては東洋区とオーストラリア区の移行区画にあるこの地域にて、昆虫相の調査を主に行った。
基本的に昼間は山へ出かけ訪花する昆虫などの採集を行う、トモホン周辺や日曜日には40kmほど離れたビツンへも足を伸ばし現地人と共に山を行動するなどした。夜は白布と水銀燈を用いたライトトラップを行い走行性のある昆虫を採集していく。移動には原付きバイクを使った。開発が盛んに行われ山がどんどんホテルや道路に変わっていく現場や、地域特有のスコールなどの気候の違い、現地の木材の切り出しの現場などを見学した。また時々町のカフェなどで過ごし現地の人の感じ文化の違いなどを把握していた。
気付いたこと、見つかった課題:
様々あるが、まず日本の衛生環境の良さは痛感することとなった。滞在最初の2週目移行は軽度の下痢症に悩まされ続け一度だけ脱水によるめまいや吐き気などが続くなど悩まされたこともあったがおおよそなんとかなった。これは生の果物の摂取による感染症かと思ったが、よく行く飲食店でトイレ後手洗い場を聴いたら食器をためおいたシンクを指さされたことで、「不浄の左手」文化圏でありながらこれなので、もはや原因の詮索は野暮だと気付いた。日本の山と比べ昆虫がかなり少ない。これは意外な誤算であった。日本では通年それなりに雨が降り水を提供するので昆虫は冬を除きいつでもそれなりにいるものだが、乾季と雨季を繰り返すこの土地で乾季は昆虫にはかなり厳しいものなのだろう。私が渡航したのは乾季→雨季への移行期で、これは昆虫の観察・採集には不向きな季節とされ調べてもそもそもあまり資料が得られなかった為むしろ興味をそそられていったが、本当に予想よりも虫が少なく昆虫の豊富な東南アジアというイメージは覆された。
渡航を経ての今後の制作活動:
今後の制作活動には今回の活動の中でてにはいった素材を活用していきたいが、同時に資源の略奪という面から制作を見つめ直す必要があると感じた。というのも、ビツンはかなりの面積で原生林が残っている地域であったが、一面パームヤシの広がるエリアもあった。これは植物性油の原料で輸出され日本のポテトチップスなどにも使われているようだ。当然植物が限定された山は多様性を失い環境の変化に弱くなる。他の地域でもこれが問題視されているらしい。本来ここにあった原生林はインドネシアの豊富な自然資源の供給源でもあったはずだが植物油を先進国が消費する為にそれが失われた姿をみて、自身の昆虫を素材として用いた制作も同質のものだと痛感したためである。
本奨学プログラムを利用してみて:
給付額がどのように算出されたかがわかると、自分がお金をかけすぎているのか、それとも滞在地の物価が高いのか、などの目安になって行動を決めやすいなと感じた。過去の奨学生に聞いたところ準備していた金額より結局多めに持ち出すことになったという話をよく聞くので、学生が申請時に予想している給付額と実際の給付額に差があり、場合によっては渡航計画の実施に無理を生じさせる可能性がある点が、改善の余地があるのだろうと感じた。
9/2~成田空港より渡航〜
9/3 タイを経由してインドネシア、マナド空港着、トモホンへ移動
9/4 トモホン市内のホテルへ滞在、ライトトラップが可能な宿を探索
9/7 トモホン市街の宿へ移動、滞在、ライトトラップを開始
9/8トモホン周辺にて昼間のリサーチを開始 密造酒作りのおじさんに挨拶し山へ入れてもらう為の許可をもらう。
9/19 感染性胃腸炎発症、マレーシアでの経験から診察を受けると必然的に謎注射を打たれるのでは?と危惧しネットで薬を調べ病院で購入
9/21 市場Tomohon Traditional Marketにて腐ったバナナなど果物を買い果実トラップを開始
9/22 ビツンへ調査 メタリフェルクワガタを確認
9/25 ライトトラップ 28時頃エドワードサン、シンジュサン飛来 アトラス短飛来 ダイコクコガネ初飛来する
10/3 ライトトラップ actias isis飛来 クリスティンに呼ばれ裸足で駆け回り犬の糞まみれになりながら採集
10/11 マナドにて日本人会に参加
10/12 トモホンのライトfitトラップにヒゲブトオサムシが入る 丸山氏に確認
10/15 原付きで1時間ほど離れた場所へ向かい調査、鉈や銃を担いだおじさんが多い
10/19 胃腸炎も収まった為、原因を探るため再び露天で青果物を購入し食べる
10/20 ハチに目の横を刺される、インドネシアのミツバチも日本のミツバチも痛みは対して変わらない
10/23 昆虫の持ち出し許可申請
10/27 マナドから日本へ出発
帰国翌日 感染性胃腸炎発症 原因は青果物の説が濃厚に。