2017年度短期派遣奨学生〜黒坂 祐

研究タイトル:
「パウル・クレーとペーター・メルクリにみるスイスの環境と建築」

氏名:黒坂 祐
奨学年度:2017年度奨学生
奨学区分:短期派遣枠
滞在期間:2017.8.29 – 9.29
滞在先:スイス

活動内容:

パウル・クレーの生まれ育ったスイスの首都ベルンに拠点を置き、世界遺産でもあるベルンの街を歩きまわること、スケッチをすること、実際に生活してみることを通してパウル・クレーの造形思考がどのようにして形作られていったかを体験することで感じるということをリサーチとした。
また近現代建築の最高峰が集うスイスという国は歴史的な街や土地とどのように向き合い、新しい概念を持った建築物を建てているのか、著名な建築家が建てたものを中心に見てまわるとともに、伝統的なもの、庶民の生活に根付いたものなどを通してリサーチを行なった。

気付いたこと、見つかった課題:

私は今回の渡航で初めてヨーロッパに渡りました。パウル・クレー、ペーター・メルクリとリサーチの対象とする作家を絞っては居たのですが、それ以外にも美術館、博物館、大聖堂、その他様々なものを見て来ました。
その中で日本とのギャップを感じた最大のことは美的なものへの尊敬です。これは単に美術に限った話ではありませんが、美術館にしても、作家への最大限の尊敬が展示する態度や美術館の立地、建築設計などお金の必要な部分にまで行き届いていました。その尊敬というのは軽々しくできるものではありません。価値を理解しなければできないことなのです。これが近代のものだけでなく、最先端の現代美術にも積極的な理解がなされています。私は日本という国がこのような姿勢になるには一体何十年かかるのだろうと失望しましたが、それこそが私たちの世代の使命であるように感じました。

渡航を経ての今後の制作活動:

スイスはすばらしい国でした。治安はよく、個人主義であるが故に受け皿も広く、国としての態度がはっきりしていてとても外国人として過ごしやすかったです。
スイスという国に感銘を受けるほど、自国について思うところが増えていきました。東京オリンピックに向けた急なグローバル化、まずこのグローバル化という言葉を勘違いしているのです。急ごしらえで異文化を受け入れることを推し進めるのではなく、日本という国の世界への態度を固めることが、グローバルな思考なのだと思います。
先述しましたが、日本では美術への理解はあまり進んでいるとは言えません。それは市場を見ても明らかですし、実際に体験したことも含め、はっきりと言えます。伝統に固執するあまり、腐敗が進行している場所があまりに多すぎるのです。これからは私たちがつくっていく新しい場所に、国について来てもらわねばいけません。

渡航スケジュール:
8/29 羽田空港を出発
8/30 ハマド国際空港を経由し、チューリッヒ国際空港に到着
同日滞在先のベルンのアパートに到着
9/29 チューリッヒ国際空港を出発、ハマド国際空港に到着
ハマド国際空港から羽田空港に出発、到着
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