2016年度短期派遣奨学生〜星野 陽子

活動内容：

大自然も大都市も、巨大なスケールで体験することのできるアメリカに興味をもち、2ヶ月間で国立公園、都市の摩天楼や廃墟、砂漠の美術館を巡りました。国立公園の壮大な渓谷や山脈を、都市では高層ビル群や歓楽街のネオンを、展望台やボートツアーを利用して様々な角度から、また日出や日没など時間帯を変えて観察し、その都度変わる景色の変化をその場で体感しました。運転免許もなく、お金にも限りがあった為、一人だった自分はその場その場で様々な人に助けられながら移動を続けていきました。かつて栄えていた住宅団地が爆破解体された跡地や様々な廃墟、逆に昔は荒廃していた貧困地域を巡ったり、人に見せることを目的としない砂漠の中の美術館を訪れながら、それぞれの土地の持つ空気の差や、全く違う時間の流れ方、人々の性格の違いをまざまざと見ることが出来ました。

気付いたこと、見つかった課題：

誰も自分のことを知らない土地で一人歩いていると、自分が解放されていくような気持ちになりました。日本での自分が常に、人にどう見られるか、どう見せるかという事を意識して生きていることに気付かされました。国立公園では観光客であり、人気のない田舎の廃墟でアジア人は異質でしたが、沢山の人種で賑わう都市を徘徊しているときの自分は、一番何者でもありませんでした。私はそれに、自分が自分になっていくような感覚を覚えました。その感覚は普段自分が作品を作る上での「こうでなければならない」という意識を忘れさせてくれました。そして、滞在中得た感動に言葉はほとんど必要なかったこともあり、作品に対してもっと感覚的になっていい、もっと説明できなくていい、もっと好きなことをやっていいと感じました。自分の信じたことを表現する勇気を貰ったと思います。

渡航を経ての今後の制作活動：

体験したことないものすごい距離をもつ空間は、パノラマのように映ってしまう。本当なのに嘘に見えること、嘘なのに本当にみえること。自分が制作において大切にしなくてはならない動機を改めて確認することが出来ました。すべての常識を凌駕するようなパワーとテンションは自分にとってアメリカでしか得ることのできないものだったと思います。そして滞在先や移動手段をその場で変えながら決断していったことは自分にとってかけがえのない経験となりました。
全く知らない現地の人へ積極的に交流を図り、英語も喋れないのに宿を借りたり車で案内してもらったり失くしたものを探したり、その一つ一つの体験が自分にとって大変刺激的で、今の自分を支える自信となっています。

本奨学プログラムを利用してみて：

実際に海外へ行くことはこの制度を利用しなくても出来ることです。しかし、自分で志願をし、選んで頂いて得たお金だからこそ、人一倍この渡航期間で普段では出来ない経験をしなくてはならないという意識が芽生えました。「ただの観光では終われない」という任命感が、一つ一つの行動や決断の場面で少しでも挑戦的な選択をする手助けをしてくれました。それにより、普段の旅行では味わえない体験をすることが出来たと思います。