研究タイトル:
「芸術の光、土地から派生した表現を巡る旅/フランス留学及び近隣諸国における自主研究」
活動内容:
1ヶ月半の欧州周遊を経て、その後数ヶ月を交換留学先であるナント美術大学(フランス)に籍を置き、半年の間でインプット/アウトプットを繰り返す流れを意識しながら制作を行いました。
研究旅行では近現代の芸術・文化に焦点をあて西洋美術の足跡を辿る様にフランス・ベルギー・オランダ・イギリス・スペインを巡り、各国の美術館や画家が暮らした街などを訪れました。
自然環境や土着的文化が作り手や表現に与える影響がどのようなものなのか、各地の芸術家たちが目にした風景や土地を訪ね歩きながら表現の根幹を探りたいと考えました。特に真夏の欧州の太陽光が土地ごとにその色彩や形態、都市の様相をどのように映しだしているのかは大きな関心事のひとつでした。
長期滞在したナントの街では、現代美術の暮らしへの浸透、その変遷や取り組みについて大学の授業等を通じリサーチを行いました。
気付いたこと、見つかった課題:
多様な表現やその文化的背景を学ぶにあたり、欧州が「地続きの大陸」であるという点は常に自身の関心の一部でした。
日本が他国からどのような国として認知され相対化されているのか、自国を見つめ直すことは自分のことを考えることでありそれぞれのナショナリティから現代ではどのような表現が展開され得るかを繰り返し考察していました。
異なる環境化で育まれた絵画や建築物が、土地ごとの特性を色濃く反映しながら存在している点も非常に興味深く、表現と土地の関係性を探る上でも研究旅行はとても良い機会となりました。
旅先では絵画に描かれた姿そのままを残す風景を繰り返し目の当たりし、そのたびに作り手の眼差しを追体験するような不思議な感覚に驚かされました。
様々な人種や宗教、文化が共存する欧州での滞在により偏った自身の価値観が押し広げられ幾分和らいだように感じています。
渡航を経ての今後の制作活動:
留学先のナントは程よく近代化した住みやすい街で、昨今の文化政策により芸術は暮らしのなかに浸透し人々の生活を刺激する役割を果たしていました。また単に鑑賞される作品としての側面だけでなく、街の風景を一変させる装置や対話の手段としても表現が機能しており学ぶべき事柄が多かったように思います。
大学では様々な授業への参加を通じて教授や友人らと繰り返し対話を行いました。問題提起を重んじる姿勢や作品に対する多様な考え方には幾度も触発される機会がありました。また半年間の研修を通じ、物事に内包される価値や意味は国や文化、歴史的背景によって変化し得るのだということに改めて気付かされました。特に住環境の在り方が日本と欧州では様々な要因から大きく異なるため、それらが個人形成や社会に与える影響について考察できた点も今後の制作の糧となりました。
本奨学プログラムを利用してみて:
過ごしてみればあっという間の研修期間でしたが、自身の制作やこれからの活動の糧となるような数多くの経験をさせて頂きました。自費ではなかなか実現が難しい旅程も奨学プログラムを利用することでより充実した内容になりました。
また、渡航前に研究内容を繰り返し吟味したことで、目的や展望を明確化させることができより積極的な姿勢で取り組むことが出来ました。
・8月9日 羽田空港より渡航。シャルル・ド・ゴール空港(フランス)着
・8月10日-23日 パリ、ニース、ヴァンス、アンティーブ、エクスアンプロヴァンス 滞在 (フランス)
・8月24日-28日 アムステルダム、デンハーグ、デルフト 滞在(オランダ)
・8月29日-31日 ブリュッセル 滞在 (ベルギー)
・9月1日-5日 ロンドン 滞在 (イギリス)
・9月6日-9日 パリ 滞在 (フランス)
・9月10日-1月6日 ナント 1月下旬まで滞在 / ナント美術大学へ交換留学 (フランス)。途中、近隣都市滞在 / パリ、ポルニック、クリッソン等
・1月6日-10日 バルセロナ 滞在 (スペイン)
・1月20日-26日 パリ 滞在 (フランス)
・1月27日 羽田空港着