2015年度短期派遣奨学生〜スカリプカリウ落合安奈

研究タイトル:
「1.自己のルーツに関するアジアとヨーロッパ、ホロコースト、制作テーマの“繰り返される「分離」と「融合」”についてのリサーチ/2.現代美術の盛んな国で、新たな学びの場を開拓する」

氏名:スカリプカリウ落合安奈
奨学年度:2015年度奨学生
奨学区分:短期派遣枠
滞在期間:2015.8.15 – 10.4
滞在先:トルコ、ドイツ、ポーランド、イギリス

スルケジ・ショー 《祈りのための旋舞》(イスタンブール、トルコ)

活動内容:

トルコ、ドイツ、ポーランド、イギリスの4 カ国へ行き、制作テーマに基づいたリサーチや、各国の美術館、ギャラリー、博物館、美術大学を訪れました。
トルコでは、イスラム文化・美術に惹かれ、中でもミニアチュール(細密画)に興味を持ち、現地でアトリエを見つけて習いました。
2カ国目のドイツではホロコーストやベルリンの壁に関する博物館等を巡り、起こった出来事を学びました。
3カ国目のポーランドでは、アウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所を訪れました。
4カ国目のイギリスのロンドンでは、現代美術を中心に美術館や博物館やギャラリーを巡りました。
ヴィクトリア・アンド・アルバートミュージアムでイスラム文化への興味を再認識し、再びトルコを訪れます。イスタンブールでカリグラフィー(アラビア文字)を習える先生を探している中で、集合アトリエにたどり着き、様々な伝統工芸を専門にしているアーティストたちと数日にわたって交流しました。そして、ターナー賞を見るために再びイギリスへ向かいました。様々な民族や宗教に触れた旅の最後に、聖マンゴー宗教博物館でそれぞれの宗教の違いや類似点について鑑賞しながら考察しました。

気付いたこと、見つかった課題:

どこの国でも沢山の人に親切にしてもらいました。しかし、とても親身になってくれた人が次の瞬間には「あの国の人は好きではない」と言っていたり、友人になった人がシリアから逃れてきた人だったりと、民族や宗教など様々な単位で偏見が存在し、それはどこまでもループしているように感じました。
宿泊はほとんどドミトリーだったので、様々な国の人達と同じ部屋で眠りにつきました。そこで垣間見た生活のワンシーンや、たわい無い会話、街中で見かけた人々の営みのカケラを集めると、外見や習慣に違いはあっても似たようなことで喜んだり悲しんだり怒ったり驚いたりしていて、人種とか宗教で括られる前にみんな人間なのだということをしみじみと感じました。
とても複雑な問題なので、まずは宗教学や文化人類学、哲学等の分野をもっと学び、将来的には人と人の理解の為に作品で少しでもアプローチできるようになりたいと思っています。

渡航を経ての今後の制作活動:

イスラム文化・美術との出会いは、当初企画していたリサーチ以上に興味を惹かれました。治安への不安でトルコへの滞在期間は短く設定していました。しかし、2ヶ月の内に二度訪れるほど、トルコの文化に魅力を感じました。
実際に訪れて自分で見て知ることが何より自分にとっての真実でした。外国を訪れることで、距離とは関係なくその国を近くに感じるようになったので、私はもっと多くの国を訪れたいと思いました。旅に出なければ出会うことのなかった、その土地に生きる人々との触れ合いこそが、場所以上に自分にとって重要だと気付きました。その体験が帰国後も、様々な人と出会いたいという欲求を刺激し続けています。

本奨学プログラムを利用してみて:

奨学生に選んで頂いたことで、関心のある複数の国を一度に訪れることができました。そして奨学生であるということが、いつも以上に積極的に行動することを後押しし、毎日できるだけ多くのことを吸収しようというアグレッシブな気持ちになれました。大変だったことも含め全てが、今後の活動の糧になっていくと確信しています。

 

渡航スケジュール:
・8月5日-6日 成田空港より、アタテュルク国際空港 着
・8月6日-20日 トルコ滞在 主な訪問先及び活動|旧市街、アヤソフィア、グランドバザール、スレイマニエ・ジャーミー、ガラタ橋、ガラタ塔、新市街、イスタンブール現代美術館、聖アントワーヌ教会、スルケジ・ショー鑑賞、ミマールシナン大学、ミニアチュールをアトリエで習う、国立考古学博物館、地下宮殿、ブルーモスク、カッパドキア、ギョレメ野外博物館、写真作品制作 他
・8月21日-9月5日 ドイツ滞在 主な訪問先及び活動|ヴィクトリア公園、ユダヤ人博物館、壁博物館、チェックポイント・チャーリー、ハンブルク駅現代美術館、シナゴーグ、アンネフランクセンター、Kunst Hall、ノイエ・ヴァッへ、歴史博物館、虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑、ティーアガルテン公園、ブランデンブルグ門、ホロコースト記念碑情報センター、ベルリン芸大、映画ミュージアム、街中の慰霊碑やモニュメント巡り、シュタージ・ミュージアム、ベルリンの壁記録センター、シンティ・ロマの追悼記念碑 他
・9月6日-8日 ポーランド滞在 主な訪問先及び活動|アウシュビッツ・ビルケナウ収容所、ヤダヤ人居住地域、ヴィリチカ岩塩抗(塩の教会) 他
・9月9日-20日 イギリス滞在  主な訪問先及び活動|チェルシー・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン校卒業制作展、テートモダン、蚤の市、ケンジントン・ガーデンズ、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ、ヴィクトリア&アルバートミュージアム、市内ギャラリー鑑賞、ミュージカル鑑賞、科学博物館、自然史博物館、大英博物館、テートブリテン、セントラルセントマーチン校 他
・9月20日-28日 トルコ滞在 主な訪問先及び活動|ビュユック島、マーブリング体験。カリグラフィーをアトリエで習う、イスタンブール・ビエンナーレ、イスタンブール現代美術館 他
・9月28日-10月3日 イギリス滞在 主な訪問先及び活動|Center For Contemporary Arts、ギャラリーオブモダンアート、グラスゴー芸術大学、スコットランド国立現代美術館、エディンバラ芸術大学、エディンバラ城、トラムウェイ、聖マンゴー宗教博物館、グラスゴー芸術大学卒業生展示 他
・10月4日 成田空港 着
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