2019年度短期派遣奨学生〜山田ゆり

活動内容：

日本人の身近なところで生活している中国人の方にインタビューを行い、そこから生活の様子や生まれ育った環境を記録したドキュメンタリーを制作しました。以前、バイト先などで中国から来た留学生たちと接する機会があり、その際に自分の育った故郷や国、家族がどのようなものであるかについて話を聞くことがありました。それは非常に興味深い話である反面、私が彼らと同じ空間を生きていなかったが故に全くリアリティのない話でもありました。私は、普通の日本人と同じくらい身近に生きている彼らの話を、同じくらい実感を持って聞くことができないことをいつも残念に感じていました。そのため、今回の作品を通して彼らの育ってきた背景を記録すること、またそこで私が見たものを表現することで、私自身も、鑑賞者もより彼らのことを、立体感のある存在として感じることができるのではないかと考えました。
基本的に単一民族の国家であるこの日本においても、多くの外国人の方が日本で暮らし始めています。このプロジェクトを通して私は、私達と彼らの何が似通っていて、何に違いがあるのかということを自分なりに考えるきっかけにしたいと思いました。

気付いたこと、見つかった課題：

語学が不自由な中で、どう人とコミュニケーションをとるか？ということが今回見つかった一つの課題でした。
本来はある程度語学が分かる状態で行った方が良かったのですが、作品制作ができるレベルまで勉強するのは難しく、制作においては大部分日本語の分かる現地の方に協力していただきました。ですが、細かい質問や発言の意図が伝わっていなかったり、スケジュール等の誤認が起きてしまったり等、完全に意思疎通するのがとても大変で、母語の違う相手にこちらの意図がわかりやすい伝え方をする難しさを痛感しました。ですが、この経験は今後言葉が通じる人相手に物を伝えるときにも役に立つのではないかと感じています。
また、１ヶ月間知らない場所で生活をすることを考えたときに、やはり事前の下調べはかなり重要であると感じました。今回で言うと、現地での動きやすい移動手段や日本でインストールしておいた方が良かったアプリなど、現地で気づくことがかなり多かったのですが、事前に調べておくことでよりスムーズに取材が進められたのではないかと思いました。

渡航を経ての今後の制作活動：

今回ほぼ初めて外国に長く滞在する機会を得て、日本ではない国のコミュニティや個人のあり方を観察することができました。日本と似通っているなと思うことも多々ありましたが、やはり日本の中でのコミュニティ間の差よりは、もっと大きい違いがあるように感じられました。例えば上下関係や家族の関係性のあり方、日本とは違う歴史を歩んだために生まれる人間関係の作り方の違いなど、沢山今後の参考になることを発見することができました。
日本に戻ってきて、色んな人や場所に接しましたが、今回の経験を経てそれぞれの場所の些細な違い、また共通点により敏感に気づけるようになったのではないかと思います。
今後もインタビューを通して制作を行っていくつもりでいますが、その際にも、今回得られた課題点(客観的に見て、相手にこちらの意図がわかりやすい伝え方を心がけること)を意識し、より深く自分の作品制作の仕方を見直していければと思っています。

本奨学プログラムを利用してみて：

この度はご支援いただきありがとうございました。
支援金額、時期等私にとっては概ね適切でしたが、あえて言うなら、不測の事態になった場合に連絡する先や、少額で借りる形でも構わないので追加で給付が受けられるシステム等があればと思います。実際今回もトラブルで宿泊先を変えることになったり等一瞬ヒヤッとすることもあったので、そのようなときに助けてもらえる仕組みがあるとより安心かなと思いました。