2019年度長期派遣奨学生〜高橋鮎子

研究タイトル:
「着飾るということ、宗教政治性とファッションの繋がり」

氏名:高橋鮎子
奨学年度:2019年度奨学生
奨学区分:長期派遣枠
滞在期間:2019.9.10 – 2020.3.7
滞在先:フランス(パリ)/イギリス(ロンドン)/イタリア(ミラノ・ヴェネツィア・フィレンツェ・ローマ)
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活動内容:

パリ国立高等美術学校に交換留学生として通いながら、衣服の多様性が進んだ現代で宗教やジェンダー間の違いによって起こる服飾の差異を顕現化するために現地や他の留学生との対話を重ねました。芸大では仏教画から見るジェンダー史と服飾の問題についてテーマとしており、ドメスティックな作品へ帰着していました。性と服飾という普遍的な問題をよりグローバルな視点から再考察するために、近現代のファッションの礎を築いたフランス服飾史を学びました。対話ではフェミニズムの観点から「着飾る」という行為を見た時の政治性について議論を展開し、国ごとのジェンダーギャップや女性服飾史の流れを大系的に学ぶことを目的としました。

気付いたこと、見つかった課題:

女性側の視点で着飾るという行為を語った時に国としてのジェンダー観の違いを顕著に感じました。日本では同調圧力的な他者への見た目の言及が厳しいと感じます。化粧の仕方や服装、体型を批評しあう奇妙な風習だと捉えることもできますが、その根底には根強く残るジェンダー問題、フェミニズムへの希薄な観念の結果だと言えます。対話を通していくなかで日本のジェンダーギャップ指数に低さについて質問されることも多々あり、逆説的な形で日本の現状を再度学ぶこととなりました。
また留学中に大規模なストとデモに巻きこまれたことにより、政治的な視点の必要性を強く再確認しました。国民と政治の距離感の違いを間近で目撃し、またその渦中において見えてきたものは日本では発見し得ないものだったと思います。

渡航を経ての今後の制作活動:

フランスでは国の芸術や文化に対する姿勢の違いを痛感しました。寮で日本人官僚の留学生と出会いましたが、政治家とアーティストの視点の断絶を感じました。その原因には美術教育の至らなさがあると考えています。美術史の流れや考え方を養う活動を地道にでも続けていく必要があります。自らの制作については、生の声を聞くこと、対話を繰り返していくこと、そこから得たものを学術的なエビデンスと示しあわせ、作品として可視化していきたいと考えています。

本奨学プログラムを利用してみて:

観光では出会うことのない人たちと関わることが出来ました。留学先の学校より、現地に何十年も暮らしている日本人の方との会話や、日々の暮らしの中から様々な差異を見つけ、学ぶことが多かったように思います。また半年という期間も長すぎず短すぎず、「行動せねば」とちょうど良くプレッシャーになる時間でした。
馴染みのない言語の中で暮らすということは、静寂の中で過ごすことと同じでした。日本から持ってきた自分の考えと、現地で得たものを再構築していく環境としては最良でした。
今回の派遣期間は他の奨学生の方も困難が多かったと思います。今後また報告会や展示などの機会を設けていただき、みなさんとお話しできることがあれば幸いです。
またこのような経験をする機会を与えてくださった石橋財団の方々、教授方には心より感謝申し上げます。

 

渡航スケジュール:
2019年9月10日羽田空港より渡航、ヒースロー空港(イギリス)着
9月17日ロンドンからパリへ移動、パリ北駅着
9月23日パリ国立高等美術学校に交換留学開始
10月9日写真家Eric Poitevinのアトリエに所属
11月7日イタリア・ミラノへ渡航
11月9日ヴェネツィアへ移動
11月11日フィレンツェへ移動
11月12日ローマへ移動
11月14日パリに戻る
12月6日フランス全土で大規模ストとデモが起こる。これより1ヶ月半はまともな活動ができなかった。
1月17,18日パリファッションウィークのバイトをする
1月22日パリ国立高等美術学校において成果発表展
1月31日交換留学終了
3月6日シャルル・ド・ゴール空港より出発
3月7日成田空港より帰国
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