2019年度短期派遣奨学生〜林 裕人

研究タイトル:
「Following the Sun」

氏名:林 裕人
奨学年度:2019年度奨学生
奨学区分:短期派遣枠
滞在期間:2019.7.27 – 8.2
滞在先:韓国(ソウル)/中国(上海、香港、南寧)タイ(ハノイ、ホイアン、ホーチミン、シェムリアップ、バンコク)/インド(カルカッタ、ベナレス、アグラ、デリー)/イラン(テヘラン、イスファハン)/トルコ(イスタンブール、アクヤカ)/ブルガリア(ソフィア)/イタリア(ベネチア)/フランス(パリ)、スペイン(マドリード)/ポルトガル (リスボン)/イギリス(ロンドン)/ドイツ (レックリングハウゼン、デュッセルドルフ、ベルリン、ドレスデン)/オーストリア(リンツ)

活動内容:

小田実の「何でも見てやろう」と沢木耕太郎の「深夜特急」に触発され、彼らの旅路をなぞる旅をしました。
「死生観」を一つテーマにして各地で現地の人々とコミュニケーションをし、また各地の美術を見て回りながら、ユーラシア大陸という広大な土地の上での人々の移り変わりを観察しました。

気付いたこと、見つかった課題:

▼美術・アートに関して
広く世界中に美術は存在していますが、各地のフィールドによってその在り方はとても様々です。
香港のコマーシャルライクなアートギャラリー、ホーチミンのアクティヴィズム的な切実な活動、インドの宗教と結びついた造形やグラフィック、テヘラン近郊の山で小さな子供が描いて売っていた100円の絵、サンマルコ広場を見下ろす彫像、パリやベルリンのコンテンポラリーアートギャラリー、そういったものたちを矢継ぎ早にわずか3ヶ月の中で見て回ることで、そこに自分自身が感じていた序列を解体することができたように思います。
▼グローバリゼーションに関して
ある水準を超えると都市は画一化していくというような言説があります。僕は家族旅行でバンコクに行ったときなんか、ああ大体世界なんてどこいってもマックとスタバとセブンイレブンでできているんだなあ、なんて思った記憶がありますが、実際は同一性の中でもすごくローカルな違いに満ちていて、とても興味深いし魅力的なことがたくさんあることに気づきました。グローバリゼーションとかポストモダンとか、そういうキーワードで抽象化して語られる印象論よりも、実際に現地に足を運んだ時の手触りにはもっと豊かな感触があります。
▼自分自身に関して
旅というのは誰かのお世話にならないと続けていけません。初めて会った人たちを信頼し、心を開き、親切を受け入れる。それはやはり日本の生活においてはあまり出会えないことです。とても素朴でナイーブなことですが、そういう温かい心の広がりのようなものを、僕は受け取ったように思います。
▼旅の辛さについて
大体何かを思い出すときには結局良いことばかりを話してしまいますが、旅は基本的に辛く過酷なものです。特に東南アジア〜東アジアはキツイです。
それは自分自身が、経済格差的な観点から言えば圧倒的に持てる者の立場から持たない者を常に見つめ続けなければいけないという辛さです。
その中でしかし僕は彼らの親切を受けたり、時には(というより基本的には)物をねぎったりして、移動を続けなければいけないのです。段々何が良いとか悪いとかいうことがわからなくなって、ただ疲労ばかりが身体の奥深くに蓄積されていくようになります。そんなに、呑気に楽しいだけというわけにはいきません。

渡航を経ての今後の制作活動:

直接の成果はエッセイで発表しようと考えています。
それ以外の制作としては、上述の得たことを糧に僕は世界観を拡張することができたし、自分の手の届く範囲が大きく広がったと思います。

2019年の旅を終えて2020年になると、コロナの影響で物理的な距離が大きく人々を隔てるようになりました。このタイミングで渡航できたのは幸運でした。
現在制作中の作品も、発表するかは分かりませんが、去年の旅と現在のシチュエーションをにアプローチしたプロジェクトを行っています。
今後の制作においても、直接的にも間接的にも旅の経験が生かされてくるように思います。

また、制作に限らず自分の人生として見ても、様々な国を巡る経験は大きな糧になったと思います。

本奨学プログラムを利用してみて:

本旅では様々なトラブルに見舞われました。そういうときの海外での孤独さはなかなか厳しいものですが、そういう時であっても、自分を支援してくれた方がいるということを考えればこそ縮こまらずに次の行動に顔をあげることができたと思います。
大変感謝しております。

成果報告展と発表会はもっと改善の余地があったと思います。特に僕の時は自分も含めて卒制を控えた学生が多く、あまり周到な準備ができていませんでした。せっかく貴重な体験ですから、もっと学生同士でディスカッションをし、会場も学外で行うなどしっかりした成果を打ち出す場としてもう少し有効利用できるだろうと思います。

 

渡航スケジュール:
7/27〜8/2 韓国 ソウル
〜8/20 中国–タイ 上海、香港、南寧、ハノイ、ホイアン、ホーチミン、シェムリアップ、バンコク
〜8/26 インド カルカッタ、ベナレス、アグラ、デリー
〜9/11 イラン-トルコ テヘラン、イスファハン、イスタンブール、アクヤカ
〜9/13 ブルガリア-イタリア ソフィア
〜9/24 イタリア-ポルトガル ベネチア、リンツ、ドレスデン、パリ、マドリード、リスボン
〜10/7 イギリス-ドイツ ロンドン、レックリングハウゼン、デュッセルドルフ、ベルリン
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